空中散歩ブログ

そらなか004の思い出の保存庫です

この1枚にまつわる嫌な思い出

 ジョン・コルトレーンの代表作に挙げられることも多い名盤『マイ・フェイヴァリット・シングス』。

 もう30年近く前の話になるが、私がジャズも好きでCDを買い集めていることを知っている会社の先輩から「友達に最近ジョン・コルトレーンというジャズ・ミュージシャンに興味を持ちだした奴がいるんだけど、CDを持ってるなら貸してやってくれないか?CDを渡すのも返すのも俺が間に入るから」と言った感じのことを頼まれて、信頼していたその先輩が間に入るなら...と思い、特に返却期限も設けずに貸したCDが『マイ・フェイヴァリット・シングス』だった。

 その後、「いい加減もう返ってきてもいい頃じゃね?」と思えるくらいの時間が過ぎた頃、CD返却の際も間に入るはずだったこの先輩が半年以上に渡る長期出向で広島を離れてしまうという事態となって私にCD返却の催促をする手立てがなくなり、私自身も、私なりに日々を忙しく過ごしている内に貸しっぱなしなあのCDのことはいつの間にか意識の中から消えてしまっていた。それについてはコルトレーンの作品で特にお気に入りだったのは別の作品群で、『マイ・フェイヴァリット・シングス』は特に愛聴盤というわけでもなかったからってのもあったのかもしれない。結局、あの時に先輩を通してどこの誰かも知らぬ人に貸した『マイ・フェイヴァリット・シングス』は私の元に戻ってくることはなかった。

 「たかがCD1枚のことよ」と高をくくっていたのかどうかは定かではないが、"間に入る"と言っておきながら、先輩はその責任を果たしてくれなかった。それまで信頼していた彼へ抱いた不信感を思い出してしまうという一点で、それ以降一度も買い直したことがなく、その気にもならないって気持ちが現在に至るまで続いているジャズの名盤である。